深夜のダメ恋図鑑vs西野カナ
「深夜のダメ恋図鑑」という漫画がTwitterで流行っている。
深夜のダメ恋図鑑 1巻 尾崎衣良 - コミック小学館ブックス 公式配信
タイトルからして干物女の恋愛臭。また実写化される漫画ですねハイハイ。主演は綾瀬はるかかな?深田恭子かな?と思いながら試し読みをしてみた。
なにこれ超面白いやん。
これは漫画本を買わねば!と思いTSUTAYA、ジュンク堂書店、紀伊國屋もろもろに駆け込んだのだけど何処にも売ってない。何処も入荷待ち。店員さん曰くめちゃくちゃ売れてるらしい。SNSの力って凄い。
今回は何故この「深夜のダメ恋図鑑」が売れているのかを考察していく。
漫画版「スカッとジャパン」
「深夜のダメ恋図鑑」 は3人の女の子が主人公である。ダメな彼氏がいる佐和子、ダメ男しか寄って来ない円、少女漫画のような恋に憧れている千代の3人だ。1話完結でストーリーが進んでいき、毎回必ず「ダメな男」とのバトルがある。
尾崎衣良 『深夜のダメ恋図鑑』参照
めちゃくちゃ共感出来る。
更に必ずダメ男に対して厳しい一言が添えられているので読んでいる女性が「ああああああ分かる!!そう私もこれ言いたい!!」となるのである。
これはフジテレビで月曜20時に放送されている「スカッとジャパン」と同じ現象である。イヤミな課長、お局上司にイライラ…それに対しての逆襲が再現ドラマで作られている。そして「深夜のダメ恋図鑑」も同じ作りとなっている。そのため文字通り読後の「スカッと」感がウケているのである。
女子会と大衆居酒屋トーク
現代女子の「わかるううう!!」と言えば外してはならないのが西野カナである。例えば、このような歌詞がある。
ねえ Darling ねえ Darling
またテレビつけっぱなしで
スヤスヤ何の夢見てるの?
ねえ Darling 脱ぎっぱなし
靴下も裏返しで
もー、誰が片付けるの?
西野カナ 『Darling』参照
分かる。あるよこんな事。
同棲しているカップルの情景が浮かんでくる。痛い程に浮かんでくる。分かる分かるウチの彼氏もそんなんしてるもん。
「深夜のダメ恋図鑑」と「Darling」、情景は似ているのにこんなにも受ける印象が変わってくる。前者は貶していて後者はどこか幸せそうに描かれている。それは西野カナの曲作りが「女子からアンケートを取って作っている」事にあると考える。
「もーね、タカシったらさー帰ってきたらテレビつけっぱなしで寝てるんだよ(´・ε・`)」
誰だタカシ。
「Darling」の根幹にあるのはこれだ。そしてこれが語られる場は「女子会」である。
ここで私の定義する「女子会」を示しておきたい。
- 創作居酒屋的なオシャレ風な場所で開催される
- 食事の写真をInstagramなどのSNSに投稿する
- 参加者は大して仲が良くないため「女子会」としかその会合を名付けられない
- 男を排除した「女子会」という名前を付け空間を演出しつつ語られるのは9割男の話(女の悪口も大体男関係に起因する)
決してディスってる訳ではないです。
女子会トークで繰り広げられる「彼氏の愚痴」はどこか「幸せアピール」が含まれている。何故なら皆仲良くないから!大して仲良くない人に本気の彼氏の愚痴なんてぶつけない。「でも幸せそうだね」を言われたいだけのいわばビジネス不幸だ。西野カナの根幹が女子会にあるから「幸せそうな同棲カップル」の「Darling」が生まれるのである。
それに対して「深夜のダメ恋図鑑」である。この根幹は西野カナの正反対をいくだろう。つまり、女子会の逆である。
- え?予約取ってないから大衆居酒屋でよくね?和民行く?笑笑がいい?
- やっべ写真撮り忘れた!ていうかたこわさ撮っても意味なくない?
- 何か妙に仲良し
- 男を排除した結果言動がオッサン化している
こんなんやったことあるやろ!!
そしてそこで語られるのは本格的な愚痴だ。ガチでムカついている。もし「Darling」の歌詞をこの場で語るとしたらこうなるだろう。
「帰ってきたらさ、アイツテレビつけっぱでガーガーいびきかいて寝てんの。しかもいつもいつも靴下洗濯かごに入れないなら洗濯せんからって言ってるのにソファの下にポイッ。誰が洗うと思ってんのマジで無理、あ、芋ロック私のだわありがと」
そこに幸せアピールなどない。寧ろ「不幸アピール」すらしている。不幸と枝豆やたこわさをツマミに酒を飲んでいる。最終的にカラオケ行ってストレスを発散する。
ただここで注意したいのは「Darlingに共感出来る人は深夜のダメ恋図鑑に共感出来ない」のでも「深夜のダメ恋図鑑に共感出来る人はDarlingに共感出来ない」わけでもない。どちらの感情も1人の人間が抱きうる感情なのだ。
例えば、同棲を初めてすぐ、まだ蜜月期であれば放られた靴下も居眠りも「スヤスヤ」と表現することが出来るだろう。だけどもそれが何ヶ月も続いた後であればどちらに対してもイライラという感情しか抱けないのである。「深夜のダメ恋図鑑」と西野カナ、両者が「女子の気持ちを代弁している」「共感出来る」のは「誰でも抱く感情」であるからだろう。
「深夜のダメ恋図鑑」は前述の通り「女子会トーク」ではなく「大衆居酒屋で語られる愚痴」であることから、西野カナや「女子会」の類が苦手な女性であろうとも読んで共感しやすい。更に「スカッと」するのだから現代女子にウケるのであろう。